旅前の記録
旅に出る理由
「貴女の生活は、まだ20世紀です。エストニアの次世代的な取り組みを知ったら、そう自覚しますよ。」
エストニア視察から帰ってきたばかりの投資家の一言に好奇心が刺激された。以前、通信業界の当たり前をひっくり返したSkypeが、シリコンバレーではなくバルト海に面した小国で生まれたことを知り、何となく不思議に思っていた。『エストニアで何かが起こっている…』第六感がむくむくと疼き出す。ネットからの情報ではなく、実際に現地に住むように生活し、地元っ子とお酒を飲み交わし、彼らのメンタリティから炙り出して見よう。そんな思いで渡航に踏み切った。
エストニアでテクノロジー起業が起こる歴史的背景
エストニアは1991年にソ連から独立を果たした。暗いトンネルからようやく抜け出し、世界でWWWウェブや携帯電話が普及しだした頃に、自分たちの国づくりを始めることになった。
最初に彼らが取り掛かったのは、国民がどこに何人いるかを把握して、行政サービスを始めることだった。官僚の頭数も少なかったので、IT化を狙ったが、他国から行政ITサービスを購入するお金もない、とのことで自前で開発せざるを得なかった。
結局eIDという番号をすべての国民に割り当てることになった。日本で言えば、マイナンバーに当たるものだ。今ではこの番号を使って、税金の支払い、不動産の登記、医療、選挙での投票まであらゆる手続きが、ネットや携帯端末で出来るようになっている。日本では、苦行の1つとされている確定申告も、エストニアでは、Web上で10分もあれば出来てしまう。(※来年からは政府による代行処理がスタートする。住民は税制変更を自ら調べる必要がなく、金額等に問題がなければ、ただ承認処理をするだけだ。)
スタートアップ企業の最大クライアントは、政府であることが多いという。