旅の記録~1日目

旅の記録~1日目

ゆっくり流れる時間が好きで、バスの旅を選んだ。バス旅には思い出がある。バスに限らず、とにかく車でどこかに出かけることそのものが旅のようで、ちょっとした冒険をしている気分だった。目的なしにただただ海や山にいく、そんな時間がたからものみたいに楽しくて、金曜の夜はいつもわくわくしていた。
事故渋滞で1時間到着が遅れるというアナウンスがあっても、いらいらの気持ちは全く湧いてこなかった。マスヤゲストハウスに寄るつもりだったけれど直接リビセンに行く時間だな、と旅程を変更する。むしろ旅らしい、とすこし心が大きくなる。
上諏訪駅でバスを降りると、同乗していた人を迎える歓声があがる。きゃあ、久しぶり、暑いねえ。よく来たねえ。ひとりであることに少しの後ろめたさを感じる。くらくらするほどの熱気と青い空、白い雲。夏の空だ。長野の諏訪も、都心と変わらず暑い。

 

「リビルディングセンター」に到着してお店に入った途端、もう好きだった。初めての場所に馴染むのは、わりと得意なほうだ。でも、とにかくすぐ自分の立ち位置を格付けしてしまう。自分の身を守るための私なりの護身術みたいなもの。

(店内をオリエンしてくれたリビセンのりょうこさん、サポートスタッフの原さん)

 

古材(財)を引き取ってくることを‘レスキュー’と呼んでいる。持ち主の歴史や背景も含めて、受け止める。「古い物の気持ちがわかる人たちの手によって、ディスプレイされているね」という言葉が嬉しかったと、スタッフの方が言う。‘ReBuild New Culture’というリビセンのコンセプトのとおり、新しい価値、新しい関係性がうまれている。
お客さんで来たら、何時間居ても飽きない。

 

(次の出会いを待つ古財たち。背景を辿れるシリアルナンバー)

 

サポート業務の休憩には、近所のおばあちゃんがくれた、モロッコ豆。りょうこさん(リビセンのスタッフの方。サポーターの取りまとめ役)がゆでてくれた。お塩やみそ、マヨネーズをつけていただく。最高。
サポートスタッフの方々は知らない人のはずなのに、なぜか居心地が良い。一緒に作業をしたことが大きいかもしれないけれど、夜ごはんもよかったら、と言ってもらえたとき、迷わず‘是非!’と答える。少しも迷わなかった。不思議と。

(サポーターの新井さん、原さん、のぐっちゃん)

 

夜ご飯を食べるときに初めて、リビセンのスタッフの方が顔をそろえる。知らない人が食卓に並ぶことに少しの緊張を覚えるも、「いただきます!」のあとのがっつき具合に、笑いがこぼれる。食欲、という言葉にふさわしく、みんな我先にとごはんを取り合う。育ち盛りの中高生の兄弟みたいだ。どんどんさん、もえぎさん(リビセンスタッフの方。今日の夕ご飯担当)がつくってくれたそうめん、あんかけ、野菜のたまごとじ、ごはん。
わずか8分で完食!本能のままに生きた8分。

 

旅の神様のいきな計らいにより、どんどんさんの車でマスヤまでドライブに。
せっかくだから諏訪湖沿いを走ろうか、の気遣いで諏訪湖沿いの道へ。人はなぜ、水際にくるとテンションが上がるのか。

「下諏訪の温泉は、ばちくそ熱い」「車運転しながらてりやきマックバーガー食える」

車の中で交わされる会話ひとつひとつが、思い出に残る。この上なく、楽しい。会話をしているうち、諏訪湖の花火大会に向けて毎日開催している花火を観ようということになった。せっかくならと、道路沿いにある「くらすわ」(養命酒の会社がやっているお店)でソフトクリームを食べる。

(全員違う種類のソフトクリーム)

 

花火を観るため湖畔に下ろしてもらうと、そこではエビの夜釣りを楽しむおじいちゃんたち。夏の花火を観ながらのぐっちゃんとしょうたさんと、リビセンのことや旅のことについて話がはずむ。

(諏訪湖畔にあがる花火)

 

のぐっちゃんは、バイクで日本中を巡る旅をしている。この諏訪での日々が旅の最終地点だそう。旅でしか得られない事がある、ということを知っている。
しょうたさん(リビセンスタッフの方。6月に来たばかり)は、青春18切符で各地を巡り、リアルダーツの旅的なことをやっていたそう。それぞれが一番印象に残っている景色や出会いがあって、それを共有した時間は私にとってこの旅の中で強く印象に残すことになる。
その時の私は、久しぶりのドライブや予想外の展開を迎えたこの旅の成り行きに、今までにない高揚感を覚えていた。旅の場面がその人の人生に影響を与えるのは、なぜだろう。
強く印象に残ったことやそこでの出会いが、大きく舵をきる時の判断基準になったりする。
その人の価値観を揺さぶるような旅を、その後の人生に活かすかどうかは私次第だ。

その後マスヤゲストハウスに到着し、私とのぐっちゃんは‘ばちくそ熱い’下諏訪の温泉を堪能すべく、宿近くの「新湯」へ。のぐっちゃんが番台のおばちゃんに声をかける。
今、そこで花火みてきたんすよー。あらあ、いいわねえ。ゆっくり入ってね。また来年もきてね。リアル神田川にしては季節は夏だけど。

マスヤゲストハウスでは、みんながリビングでくつろいでいた。
私はずっとリビセンの話を聞いていた。働き方、について思案をめぐらせているこの数年間、リビセンの仕事はとても意義があって、素敵な仕事だと感じる。やってみたいとも思うし、たぶん少し違うとも思う。拠点を諏訪に移すこと、仕事とプライベートの境界線、家族のようなスタッフ。うん。結論は、出ない。