旅の記録

旅の記録

北半球から南半球へ。飛行機を乗り継いで乗り継いで25時間、ルサカの空港に降り立った。11日間の旅の始まりである。

 

 

今回の旅は、「それぞれの暮らしに出会う」をテーマにした。日々どんな場所で寝起きし、何を食べ、何を楽しみに、何を信じて生きているのだろう。都市と村、富と貧しさ。アフリカを、ザンビアを一括りにせず、それぞれを知りたいと思った。

 

首都ルサカから、地方都市リビングストン、そしてボツワナやナミビア等の国境カズングラとその周辺の村々。訪問先では、それぞれ忘れられない出会いがあった。

 

「ここが家、みんなが家族」/「何よりも家族の元に」

首都ルサカでは、フォトジャーナリストの友人がかつてザンビアで働いていた頃の知り合いを訪ねて、ストリートチルドレンの保護施設に滞在。様々な要因で路上生活を強いられている子どもたちに出会った。
親の虐待からの逃亡、家を追われて親戚を頼って出てきたはいいが同居を断られたり、そもそも住居が見つからなかったり、ちょっとした諍いからの非行、というパターンもある。食べ物も着るものも屋根もない、いろんなものを紛らわすためにひたすら眠り、酒やシンナーに手を出してしまう場合も。ラップバトルをしたり、喧嘩したり。ここにもひとつの社会がある。今回訪れた保護施設は、食事や教育、そして安全なコミュニティの提供を行うだけではなく、教会としての機能を持ち、献身的なサポートを行なっているところの一つ。彼らは新しい人が来るのにも慣れていて、すぐに会話が始まる。
12年間この関連施設で育った青年は「この施設の名前は”幸せな場所”という意味。ここはひとつの村みたい。家族なんだよ。」と嬉しそうに話していた。一方で、別の日に会った、元ストリートにいて、ストリートチルドレンの支援団体を立ち上げた方は“No other place better than home” 「彼らにとって家に勝る場所はない。家に戻れる子は家族も含めてサポートしているんだ。」と力強く語っていた。どちらも真実なのだと思う。

 

『ストリートチルドレン』と呼ばれる存在に実際に会って、何を思ったか。
一番の感想を挙げるなら、彼らは決して特異な存在ではないということ。多くのザンビアの若者同様、Facebookやセルフィーが大好き。携帯を借りては自分の一番かっこいい/かわいいショットを撮り続けている。会話をしたい、名前を覚えてほしい。「僕がだれかわかる?」と何人にも尋ねられた。一括りではない、一人一人。それぞれにまだ短いながらも人生があり、日常がある。彼らはこれから、どんな大人になっていくんだろう。そしてその中で立ちはだかる困難に、どんな風に対峙するのだろう。また、そこに自分はどう関われるのだろう。いろいろな思いを抱きながら、リビングストン行のバスに乗り込んだ。

 

 

“Love your Job” 「自分の仕事に誇りを持って生きる」

リビングストンは、ザンベジ川が大きく横たわるビクトリアの滝のザンビア側の玄関口。
英国統治時代の面影を残す街並みはルサカの喧騒に比べると落ち着いていて、人の雰囲気も違う。友人と落ち合い、サファリやラフティングなどのアクティビティのために数日間滞在した。
ここで会ったのは若手アーティストと、アウトドアガイドBunduのチームメンバーたち。

 

 

アーティストの彼。専門的な美術教育を受けていないものの、15歳の時に心に決めて、絵を描き続けている。6人の女の子の父親でもある。最近手に入れたアトリエはちょっと広めの空き地に佇む掘っ建て小屋。
「今日は誰に会えるんだろう?って毎日ワクワクするよ」
「この広場を子どもが駆け回ったり、美しい草花で溢れるガーデンにしたいんだ」
ビジョンを語る彼の瞳は輝いているが、決して肩肘張った感じではない。

 

 

ラフティングガイドを務めてくれたBunduのメンバー。清々しいほど、自分たちの仕事を、そしてそのフィールドである自然を愛している。ラフティングに生きる人生を送り、カナダやアメリカでのラフティングガイドの経験も豊富で、レジェンド!と慕われている人、大学進学を兄に譲りたまたま出会ったこの職が気に入って今やチーム一のカヤック乗りになった人、元々は建築やデザインを勉強していたけど今はガイドと組織管理系の仕事に従事する人、皆この仕事が好きだと言う。

 

彼らは、何かの拍子でこうして生きていこうと決めた人生を、自分の足でしっかりと歩いている。そして非常に気持ちの良いグルーヴで仕事をしている。その姿はとても喜ばしいもので、羨ましいくらいであった。

 

一人と一人から世界が始まる

友人がJOCV(青年海外協力隊)で派遣されている国境の町・カズングラ。
彼女はここでコミュニティナースとしてHIV/AIDSの感染症予防の普及啓発活動やクリニックの業務改善、各村でボランティアとして配備されているコミュニティヘルスワーカーとの連携など様々な業務を担っている。今回の旅は、現地で頑張る彼女の姿を一目見ることにも大きな意味があった。

 

 

 

どこに行っても、”Nashilele!!(彼女の現地ネーム)”と呼び止められ、にこやかに挨拶。
仕事熱心な人もそうでない人もいる中で、彼女の奮闘ぶりをしっかり評価してくれている方々もいる。隣に住む一家の小さい兄弟、クリニックの清掃員の女性、都市の暮らしを離れ川の向こうの村で強く生きるコミュニティヘルスワーカーの女性、同僚の助産師…彼らの中に彼女がいて、彼女の中に彼らがいる。世界はこうして一人と一人が出会うことから始まるのだなと思うようになった。