旅の記録~1日目

旅の記録~1日目

早朝 京都に到着。
ここが京都なのか、まだぼんやり。京都タワーを見て、あ、京都かも。あっという間に別の土地にいる。移動のし易さは半端ない。インフラの整備もあるけど、自身の状況がそれを可能にしている自覚はある。
京都タワーの真下で朝風呂。夜行バスでついた人たちで大にぎわい。仕事らしき人も多くいる。今日は金曜だった。新しい1日をここから始める人たち。

みどりの窓口で切符を購入。特急っていうものが身近なものじゃないっていうことに驚きを覚える。東京近郊だと特急なんて乗らないんだなと思う。

あっという間に山の中へ。外国人の団体が同じ車両にいる。どこまで行くんだろう。
途中福知山で乗り換え。友人のSと合流。山を貫くトンネルと山間の街の繰り返しで、八鹿駅に到着。

養父も読めなかったけど、八鹿も読めない。そして、養父駅は特急止まらず、八鹿駅に止まる。市役所も八鹿駅。

養父のイメージを変える人

八鹿駅で養父市で昨年から働いている菅野くんと合流。

彼の勤める「やぶパートナーズ」へ。朝倉山椒という特産品や街のプロモーションをしている。
Directorの津田さんとお話した。

とてもワクワクする方。菅野くんが養父で働いている理由の一端は津田さんのワクワク感なんじゃないかなと。

津田さんが電話している内容が、パリやドイツでの展示の話だったり、カタログの翻訳の話だったり、養父の風景とは違う話。近々パリの展示会に出るそうだ。その人次第で街のイメージも風景も変わる。

仕事の内容は多岐に渡るようで、菅野くんの脱力感にも納得。津田さんは以前は大阪でデザイナーをやっていた。そして、学生の頃、情報が全くない中国を西安まで彼女と旅したという強者。
新しい土地の面白さや、人の逞しさ、優しさを知ってる人だと感じた。

裏手に役所があり、役所へ向かう。同行した友人のSの主目的は養父で拠点を持つにはどうするのがいいのか、そもそも面白いのか、の検証。その一環として、市役所で制度等の話を聞く。やぶくらし課と国家戦略特区・地方創生課。さすが国家戦略特区。すごいぞ養父市。

実際のところ、制度や優遇の凄さはよくわからなかったけれど、人の連携の良さや、動こうとする勢いを感じた。お話を聞いた役所の方々はすごく親切だったし、色々な提案をしていただいた。街に関わる人のために柔軟に動きたいという意思があった。

カイコ先進地養父

養父は山に囲まれた盆地のせいか、雨が降ったり止んだり、晴れたり曇ったり、役所を出ると小雨だった。かいこの里交流施設へ。
地域おこし協力隊の中島さんと出会う。

中島さんは元々この地区、大屋町の出身でアートを主体に活動されているとのこと。養蚕では養父はちょっとした地区みたい。この地でまとめられた「養蚕秘録」はヨーロッパへと渡り、産業の発展に貢献したようだ。養蚕では富岡製糸場が思い浮かぶけれど、大屋町もすごいみたい。

そんな大屋町で活動する中島さんは蚕を育て、養蚕を通じて地域の交流を図ったり、子供達へのワークショップとかをしているとのこと。中島さんに見せてもらった養蚕の様子は知らないことばかりですごく面白かった。

眠や齢の話、蔟など。蚕が飛べず、逃げることもせず、外にある桑に乗っけてもすぐに捕食されて死んでしまうこと、家畜であること、を聞けたのは大きい。
培養されて、絹だけ取られる。どこにもいくことなく、死んでいく。

見せていただいた成虫の蚕は、小皿のようなものに入って、蓋もしてないけど、逃げることもなくそこにいる。

成虫になった時、オスとメスが出会うとずっと交尾して、無理やり離さないと離れない、離しても、気づけばまた交尾。そして交尾したまま弱っていく。
凄まじい一生だなって思った。絹を作るということに特化した生物。そこに向けて全力。しかも人間のフォローがないと生きていけない。
色々考えすぎる人間とも、自然の中で生きている生物とも違う。

もう一つ印象的だったのは、脱皮の話。
蚕は、頭の殻がポッと取れて、這い出すように脱皮する。それまでのシガラミを捨てるように。だけど殻は体に張り付いてなかなか脱げない。ズルズルと少しずつ脱ぐ。そのしがらみがあったからこその成長だと主張しているようだった。

人が集まる良い谷

次の目的地、Goccoへ。山と田んぼの風景。いい感じ。最後のスーパーと言われた「ミニマート」?を過ぎて、しばらく行って到着。昔、保育園だったというその建物はすごくいい味を出していて、俄然テンションが上がる。そこはアートが溢れる空間だった。

まさに、こんなところにこんな空間が!という驚き。アーティストの力はすごいと思った。今、地方で注目されているところの多くは、文化的な取り組みがある所と思っている。アートによる活性化、情報発信、つながりの構築。面白いな。でも、ここは本当にこんなところにもあるんだという所。そこが良い。展示スペースとキッチン、廊下の奥にカフェとワークスペース。そして焼き窯。元保育園だったため、所々、小さかったり、低かったり。
ここを運営している河内さんご夫妻と会う。

お二人とも特に養父に縁があったわけではなかったけど、たまたま訪れた養父とこの建物が気に入って移住した。
すごく羨ましい!気に入る、という気持ちと、そのために移住するということ。

河内さん曰く、ここは「良い谷」だと。この先には、昔、栄えた鉱山があり、外から人が来ることに慣れているところがあると。だから、自分たちが来ても、最初はなんだこいつらは?ちょっと絡んでみようっていうところから始まって、面白そうじゃないかとなって、一緒に動けるようになるって。
「良い谷」Good Valleyはこの旅で刺さったワード。

都心でもどこでも「良い谷」を見つけることはすごく大事だと思う。そして、アートだったから良かったと。農業等のこの地に元々あることしていたら、何かと言われたと。確かに、知らないことだし、なんとも言えないっていうのはあるなって。新しいことをやることは大変だけど、排他的でない、Good Valleyを見つければ、新しいことこそ繋がりを生みやすい。

河内さんのところには多くの友人が遊びに来るみたい。ひと月のうち、誰も泊まっていないというのは4日という時もあるみたい。人を惹きつける人や場所ができるだけで変わっていく。ここから変わっていく、その発信地なのかもしれない。訪れた人たちの拠点となる宿泊施設が欲しいって。いいかもしれない。まさに震源地になるかも。

最後に河内さんのお宅へ。この流れが自然ですごい。普通、お宅訪問ってあんまりないよな。Goccoから徒歩90秒くらい。まさに引っ越し中でガス管をつないでいた。畳と縁側、コンパクトな古民家。縁側からの景色が田んぼと山で素敵だ。住みたくなる。この気持ちを大事にしていきたいなと思った。違うんじゃない?って疑うよりも、そうかもしれないよ。って肯定していきたい。

温泉に行って、買い出しをして、菅野くんのうちで宴。川があり、トンボがたくさん。一人では贅沢な一軒家。
盛りだくさんの1日目が終わる。